二十日ゑびす





 京都の恵比須神社のお祭りには、ゑびす大神が海にお帰りになる「初ゑびす(十日ゑびす)」と海からおいでになる「二十日ゑびす」があります。「二十日ゑびす」は旧暦9月20日、現在は10月20日に行われます。お正月あけ早々の初ゑびすとちがって、二十日ゑびすは人出も少なく今では忘れられがちになってしまいました。でも、かっては商家にとってたいせつな日だったのです。
 明治維新のとき、政治の中心は東京に移り、京都は 一時 火の消えたようになりました。商人たちも東京に呉服などを売りに行くようになりました。その人たちが10月20日には京都に戻り、ゑびす大神を祀って神徳に感謝し、主人から番頭、丁稚さんにいたるまで講をして楽しんだそうです。これがえびす講のはじまり。
 その日のおかずがあんぺいと九条ねぎのおつゆなんです。京都ではおつゆというのはお吸い物よりも煮物に近い感じ。だしをとって、吸い物よりやや濃いめに味付けし、斜めに切った葱を入れ、食べる直前にあんぺいを丸のまま入れます。あんぺいというのは、魚のねり製品の一種で、はんぺんより食感がやわらかい。あんぺいを小判、ねぎを笹に見立てた、縁起の良い一品です。ふだんは始末にうるさい商家も、この日だけはあんぺいを一人にひとつずつふるまうのでした。
 ちなみに、商売繁盛の笹は、恵比須神社独自の御札が広まったもので、笹は「節目正しくまっすぐに伸び」「弾力があって折れず」「常に青々と茂る」といった特徴から、家運隆昌、商売繁盛のシンボルとなったそうです。